本日予約が開始される「iPhone X」と、既に発売されている「iPhone8/8 Plus」には最新のプロセッサ、A11 Bionicが搭載されています。このプロセッサを独占受注しているTSMCは次世代iPhone用A12プロセッサを7nmプロセスで2018年第二四半期(7〜9月)に量産開始するようです。
性能向上が著しいiPhone用のAシリーズプロセッサ
既に「iPhone X」と「iPhone8/8 Plus」に搭載されているA11 Bionicプロセッサを独占受注するTSMCとAppleとの間には、親密な関係が築かれてきました。理由としてはやはり、TSMCが製造するプロセッサの性能と安全性をAppleが高く評価しているからでしょう。Appleによる提携先の選別は、非常に慎重で、厳しい基準があります。
例えばA11 Bionicプロセッサに関しては、多くのメディアがベンチマークテストを行いましたが、QualcommやSamusungの自社開発チップよりもTSMCが製造するA11 Bionicプロセッサの方が圧倒的に性能が高いというデータもあります。
さらに、A11 Bionicプロセッサを搭載した「iPhone8」は、2017年のMacBook Proとほとんど同じ処理性能であるとも言われています。また、「iPhone X」に搭載されるTrueDepthセンサーで、捉えられた3D情報をリアルタイムで高速処理することができるのは高性能のA11 Bionicプロセッサのおかげです。
来年の7~9月には7nmプロセスのA12プロセッサが生産開始?
A11 Bionicプロセッサは、10nmプロセスで製造されており、A10プロセッサが16nmプロセスだったことからも、前世代より高密度化が進んでいることが分かります。そして、TSMCは2018年の次世代iPhoneに7nmプロセスのA12プロセッサを搭載するだろうと予想されています。
なお、A12プロセッサの製造に関しては、台湾のTSMCと韓国のSamsungが競っていましたが、結果的にTSMCが全ての受注を勝ち取ることができています。AppleのCOOであるJeff Williams氏も、新型のiPhoneとiPadのプロセッサは100%TSMCに出すと伝えていることから、AppleのTSMCに対する信頼が伺えます。
そして、サプライヤー筋からの情報によると、TSMCは2018年の第二四半期にはA12の製造を開始するようです。また、TSMC用に特別に作られたオランダの大手半導体装置メーカーASMLによるEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置は、台湾の中部科学工業園区で2018年の第一四半期に完成する予定で、同年第二四半期にはA12プロセッサの製造に使用される予定です。
7nmプロセスということですから、A12プロセッサは性能がかなり向上しているとみられ、動作性能や電力消費性能においてもA11 Bionicプロセッサより高性能となるでしょう。
TSMC会長、「ムーアの法則」は2025年に行き詰まる
そんな中、TSMCの会長であるMorris Chang氏は「ムーアの法則はもはや有効ではない」と語り、プロセッサの処理性能が改善されるペースが落ちることを伝えています。
「ムーアの法則」とは、「半導体集積回路のトランジスタ数は18ヶ月ごとに2倍になり、チップは処理能力が倍になってもさらに小型化が進む」という法則のことです。1965年にIntelのGordon Moore氏が提唱したこの法則は、コンピューターの処理能力向上のペースがいかに早いかを示しています。
しかし、この「ムーア法則」はもう適用できなくなるかもしれないというのです。Morris Chang氏によると、今後8年間、TSMCはトランジスタの密度を上げ続けるつもりですが、2025年にそのペースは行き詰まってしまうようです。
いずれにしよ、既に次世代iPhoneのプロセッサを製造することが決まっているTSMCですが、その処理性能はMorris Chang氏が言うように、8年後までは大きな向上が期待できそうです。しかしもし「ムーアの法則」が2025年に有効でなくなってしまったら、それ以降のプロセッサがどのように進化を遂げるのかはまだ私たちには分かりません。
Source:WeiPhone , Patently Apple
(yorimorishima)